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「ハウ・トゥー・サクシード」は1961年にブロードウェイで初演された人気ミュージカル。ビルの窓拭き青年・フィンチがとあるハウ・トゥー本を手に、大企業で出世街道を驀進していくさまをコミカルに描いた物語だ。今回の西川主演バージョンでは“21世紀版”と銘打ち、彼の勤める会社をIT企業に、ハウ・トゥー本を携帯メルマガにと随所で現代風アレンジを加えている。これがなんとも自然、違和感なく現代の物語になっていて、古臭さをまったく感じさせない。クセのある登場人物たちに笑わされながらもふと、「私の会社でも、こういうことあるかも……」と思ってしまう親しみやすさもある。それらの魅力はそのままに、再演となる今回は明るさやパワフルさがさらにアップ、熱いステージになっている。
また何よりの強みは、出演者自身が楽しんでいるということ。初日の前に行われた囲み取材で、「こんなにひとつになっている仲のいいカンパニーは経験がない。再演にあたってキャストがひとりも替わらないというのも異例のこと」と嬉しげに“カンパニー自慢”を繰り返した西川。彼の言葉どおり、この底抜けに楽しいミュージカルをさらに輝かせたのは、舞台上に流れる親密な空気だろう。息の合った出演者たちが繰り広げる楽しいパフォーマンスがハッピーな空気となり、客席を包む。
もちろん、初演時にも好評だった西川フィンチのハマリ具合も健在だ。春の公演では、8年ぶりのミュージカル出演だった西川。今回はもはや、もとからミュージカルの舞台上が彼の居場所であるかのように、生き生きと役を演じている。歌唱力や自分をよりよく魅せるポーズ、パフォーマンスなどの技術的な部分はもとより、うまく人の懐に入りこんでいく調子のよさ、憎めなさなどの魅力は、彼自身が持つキャラクター性とマッチした所以だろう。さらに共演者とのテンポよいかけあいも楽しんでやっているようで、これぞ現代版フィンチといったはまり様だ。
フィンチに一目惚れし何かと彼の手助けをするローズマリー役の大塚ちひろも、妄想爆発の現代っ子らしいハジケっぷりとその奥にある芯の強さをうまく出し、愛らしいヒロイン像を造形。フィンチの秘書であり、社長の愛人でもあるセクシーなヘディを演じる三浦理恵子のコメディエンヌぶりも嫌味なく楽しい。入絵加奈子、浦嶋りんこ、本間ひとし、藤本隆宏、赤坂泰彦、団時朗らベテラン俳優たちも、しっかりと舞台を支えつつ、ほかではあまり見ないようなおちゃめな顔を見せているのも、息の合ったカンパニーならではか。
努力しないで出世する方法は? と問われ、「あったら教えてほしいですよね」と笑いながらも、「でも結局、努力しないでいいことなんてたぶんひとつもないんだな、一生懸命になることしかないのかなって思いました」と語った西川。調子良く階段をのぼっているようだが、フィンチもメルマガ指南書に従って行動を起こし、会社の中で頑張って生きている。ハチャメチャなストーリーの中に、リアルな感情を確かに演じ、伝えるキャスト陣の熱演に拍手。明日、元気に会社に行く力をたっぷりもらえるミュージカルだ。
公演は12月2日(日)まで、東京芸術劇場 中ホールで行われる。
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